下請への「指値発注」、実は問題行為かもしれません|改正建設業法が求める適正な契約とは
こんにちは。柏市の行政書士だいち法務事務所です。
「予算はこれだけだから、この金額でお願いします」——下請への発注時に、こうした一方的な価格提示が行われることは、建設業界では珍しくないかもしれません。しかし国土交通省の「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」(第8版、令和8年1月)では、こうした「指値発注」が建設業法上問題となるおそれがある行為として整理されています。
今回は、指値発注とは何か、改正建設業法のもとでどのような点に注意が必要かを整理します。
この記事の結論
- 指値発注とは、受注者と十分な協議を行うことなく、発注者が価格を一方的に決定し、その価格での取引を強要することとされています
- 指値発注は、建設業法第19条の3が禁止する「不当に低い請負代金」に該当するおそれがあるとされています
- この規定は契約締結時だけでなく、契約締結後の一方的な代金減額にも適用されるとされています
「指値発注」とは何か
国土交通省のガイドラインによれば、指値発注とは、受注者との十分な協議を行うことなく、発注者が価格を一方的に決定し、当該価格による取引を受注者に強要することとされています。これは、取引上優越的な地位にある発注者による「地位の不当利用」に当たるものと考えられています。
取引上優越的な地位とは、受注者にとって発注者との取引継続が困難になることが事業経営上大きな支障になるため、発注者が著しく不利益な要請をしても受注者が受け入れざるを得ないような関係とされています。大口の取引先である発注者ほど、この「優越的な地位」に該当する可能性が高いと考えられます。
建設業法第19条の3「不当に低い請負代金の禁止」との関係
建設業法第19条の3第1項は、発注者が自己の取引上の地位を不当に利用して、工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金とする契約を締結することを禁止しています。「通常必要と認められる原価」とは、施工地域において当該工事を施工するために一般的に必要と認められる価格(直接工事費、共通仮設費及び現場管理費からなる間接工事費、一般管理費(利潤相当額は含まない)の合計額)とされています。
指値発注によって、この「通常必要と認められる原価」を下回る金額での契約を強いられた場合、発注者側が同条に違反するおそれがあるとされています。
契約締結後の一方的な減額も対象になる
注意したいのは、この規定が契約締結時の価格決定だけに適用されるものではない点です。ガイドラインでは、建設業法第19条の3により禁止される行為は、当初契約の締結に際して不当に低い請負代金を強いることに限られないとされています。例えば、契約締結後に原材料費や労務費が高騰したにもかかわらず、それに見合った増額を行わないことや、発注者が取り決めた代金を一方的に減額することも、同条の違反行為に含まれるとされています。
つまり、「契約時点では適正だった」としても、その後の価格転嫁交渉に誠実に応じない対応そのものが、問題視される可能性があるということになります。
確認しておきたいチェックリスト
- ☐ 下請への発注時、受注者との協議を経ずに価格を一方的に決めていないか
- ☐ 発注金額が「通常必要と認められる原価」を下回っていないか確認したか
- ☐ 原材料費・労務費が高騰した際、受注者からの増額協議の申し出に応じているか
- ☐ 契約後に代金を一方的に減額したことはないか
- ☐ 発注者・受注者間の見積・契約プロセスが、書面で記録されているか
Q. 予算の都合で金額を提示すること自体が問題なのですか?
A. 予算を前提に金額の目安を示すこと自体が直ちに問題となるわけではないと考えられますが、受注者との十分な協議を経ずに一方的にその金額を強要することが問題視されているとされています。見積内容を考慮したうえでの協議のプロセスが重要と考えられます。
Q. 下請だけでなく、元請と発注者(施主)の関係にも当てはまりますか?
A. 国土交通省のガイドラインは、発注者・受注者間(施主と元請、元請と下請の双方の関係)における取引の適正化を対象としているとされています。元請下請間だけの問題ではない点に留意が必要と考えられます。
まとめ
指値発注は、下請への価格決定における「よくある慣習」として見過ごされがちですが、改正建設業法のもとでは、受注者との協議を欠いた一方的な価格決定・減額そのものが問題視される可能性があるとされています。契約時だけでなく、契約後の価格交渉プロセスについても、書面での記録や誠実な協議の姿勢が求められると考えられます。
なお、契約書・見積書の整備に関するご相談は行政書士が承りますが、具体的な労務費の算定や賃金の是正については社会保険労務士、税務上の取り扱いについては税理士など、内容に応じて適切な専門家と連携してご案内いたします。

